第1回(2004年度)関数グラフアート全国コンテスト・結果発表
かなり以前になりますが、美術館でモネの「睡蓮」を見たことがあります。幸いにして他に観覧者は少なく、絵にかなり接近して鑑賞することができました。
そこで私は驚きました。間近で見た「睡蓮」は、油絵の具の固まりでした。複雑な色彩の油絵の具がキャンバスに幾重にも塗りつけられています。どう見てもそこに花や池が描かれているとは思えません。ところが数歩引いて絵の全景を見ると、そこには、柔らかい光の中、池に浮かぶ睡蓮しか見えないのです。
そこにある材料を用いてそこにはない何かを作り出すこと、それを「アート」と呼ぶのであれば、グラフアートも立派なアートだと、私は思います。彼らが使える材料は「数式」。色も筆致もありません。しかし、それを駆使してそこにはないものを私たちに見せてくれます。1つ1つのグラフを見ても、それがチータや蝶の一部になるとはとても思えません。でもたしかにそこにはチータや蝶がいます。
今回集められた素晴らしい「アート」たちをどうぞ御堪能ください。
福井工業高等専門学校 中谷実伸
最優秀賞 (3作品)
作品 | 部門 | 作品名 | 作者名 |
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制限部門 | 「山への道」 | 福島哲也 (石川高専) | |
自由部門 (静止画) | 「Cheetar」 | 河上亮大 (福井高校) | |
自由部門 (動画) | 「花火」 | 壷内将之 (清風高校) |
作品 | 部門 | 作品名 | 作者名 |
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制限部門 | 「気球」 | 古川智啓 (清風高校) | |
自由部門 (静止画) | 「茨城高専の金太郎飴」 | 田口のり子 (茨城高専) | |
自由部門 (静止画) | 「ほね」 | 堤夏海 (函館高専) | |
制限部門 | 「八面体」 | 久保田拓也 (一関高専) | |
自由部門 (静止画) | 「蝶々」 | 太田綾 (五戸高校) | |
自由部門 (動画) | 「サターン」 | 藤沢千尋 (福井高専) |
部門 | 作品名 | 作者名 |
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制限部門 | 「アメリカ大陸の断面図」 | 加藤仙之 (一関高専) |
自由部門 (静止画) | 「GENJA コーカサス地方の絨毯の模様」 | 下村侑希 (清風高校) |
自由部門 (動画) | 「Sunset」 | 小川拓也 (清風高校) |
自由部門 (動画) | 「冬景色」 | 荒川宗徳 (清風高校) |
部門 | 作品名 | 作者名 |
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自由部門 (静止画) | 「非常口」 | 布施和志 (福井高専) |
自由部門 (静止画) | 「Swallow Tail」 | 末永円 (福井高専) |
自由部門 (動画) | 「浅間山の噴火」 | 浦上光 (清風高校) |
自由部門 (静止画) | 「飛」 | 竹田光夫 (石川高専) |
自由部門 (静止画) | 「船」 | 山下英紀 (石川高専) |
制限部門 | 「y=x」 | 佐々木恭平 (一関高専) |
制限部門 | 「音符」 | 沼倉絵理 (一関高専) |
自由部門 (静止画) | 「ORI ON THE」 | 遊佐和哉 (一関高専) |
制限部門 | 「ピエロ」 | 高谷亨 (函館高専) |
自由部門 (静止画) | 「はさみ」 | 皆川康 (一関高専) |
自由部門 (静止画) | 「AGEHA」 | 江渡紘子 (五戸高校) |
自由部門 (静止画) | 「楽譜」 | 清野山菜美 (五戸高校) |
制限部門 | 「えんぴつ」 | 大武久乃 (東京女子大) |
制限部門 | 「禁煙」 | 武田真由美 (東京女子大) |
制限部門 | 「肉球」 | 山之内萌恵 (東京女子大) |
講評
2004年夏によびかけ、秋から冬にかけて応募のあった数百点のグラフアートの中から見事選ばれた作品について発表します多くの作品から、最優秀3作品、2位6作品、3位4作品、佳作15作品を選定しました。作品名と作者は上記の通りです。 今回は、大きく3つに分けて選考しました。制限部門、自由部門 (静止画)、自由部門 (動画) の3部門です。当初は、制限と自由の2つの部門での選考を予定していましたが、描く過程を楽しむ作品がいくつかあり、描き終わった後の絵だけでは判断できないものでした。このため1つ余分に部門としました。各学校から選考された作品について、1次選考では、各作品を福井高専の数学科教員が、デザインの良さ、式の使い方、全体のアイデアの3つの観点で、各10点満点で採点し合計得点によって、優秀作品候補を制限部門3作品、自由部門 (静止画) 3作品、自由部門 (動画) 2作品を選定しました。次に2次選考を選考委員にお願いし、最優秀作品を決定いたしました。 今回の作品は、低学年からの応募が多くグラフ電卓に触れて半年程度の生徒さん学生さんが大半でした。しかし、定義域をしっかり考えて関数を描き見事な作品を作り上げているのが特徴でした。およそ授業ではこのような関数の使い方はほとんどすることがないでしょう。描きたいものを念頭に置きながら、あれこれ工夫する生徒学生の姿が目に浮かびます。 今回は株式会社ナオコから主旨にご賛同いただき、3台のTI-89 Titaniumをはじめすばらしい賞品を多数寄付していただきました。また、幾人かの方から図書券などの寄付をいただきました。なお、今回は初めてのため様々な困難と不手際がありました。さらに、日常の雑事に追われて作業が予定より数ヶ月遅れてしまいました。謹んでご迷惑をお詫びいたします。出品のフォーマットの統一など次年度に向けて、効率的な運営と審査方法の検討をしたいと思います。第2回以降へのご協力をお願いいたします。 福井工業高等専門学校 坪川武弘